飲食店の店舗物件の探し方のコツは?居抜き・スケルトンの選び方も解説

飲食店経営において店舗物件の探し方にはコツがあります。それは「コンセプトを明確にする」「立地を選ぶ」「店舗物件の条件を洗い出す」「物件を探す」というステップで進めることです。

この記事では、各ステップの解説と、居抜き・スケルトン物件の選び方もご紹介します。

飲食店の店舗物件の探し方

飲食店の店舗物件は以下の流れで探しましょう。

飲食店の店舗物件の探し方のコツ
  • 【ステップ1】コンセプトを明確にする
  • 【ステップ2】立地を選ぶ
  • 【ステップ3】店舗物件の条件を洗い出す
  • 【ステップ4】物件を探す

後ほど、各ステップの詳細を解説していきます。

物件探しの期間は?

物件はどれぐらい前から探し出せばいいのでしょうか?

飲食店開業までのスケジュールから逆算して考えてみましょう。

飲食店開業までのスケジュール

飲食店開業までのステップは以下です。

約1年間かけて、飲食店の開業準備をする想定にしています。一つの参考としてください。

飲食店開業のチェックリスト
  1. 【ステップ1】コンセプト設計:12ヶ月前
  2. 【ステップ2】物件探し/物件契約:10ヶ月前
  3. 【ステップ3】事業計画/資金調達:8ヶ月前
  4. 【ステップ4】メニューの設定:7ヶ月前
  5. 【ステップ5】仕入れ業者の選定:5ヶ月前
  6. 【ステップ6】店舗内装・外装設計・施工/厨房設備購入:3ヶ月前
  7. 【ステップ7】資格取得・届出・手続き:3ヶ月前
  8. 【ステップ8】什器・備品購入:2ヶ月前
  9. 【ステップ9】オーダーシステム検討:2ヶ月前
  10. 【ステップ10】スタッフ採用・教育:1ヶ月前
  11. 【ステップ11】販促・プレオープン:2週間前
  12. 【ステップ12】開業

このステップから考えると、開業の10ヶ月前には、物件探しや契約を進めていくことになります。

飲食店開業までのスケジュールの詳細については、「【保存版】飲食店開業の流れを解説「いつまでに何をすれば良い?」」を参考にしてください。

【保存版】飲食店開業の流れを解説「いつまでに何をすれば良い?」

物件の賃貸借契約が先か、資金調達が先か?

飲食店開業の資金調達においては、日本政策金融公庫で融資を申し込むことが一般的です。

その際、物件の賃貸借契約が必要なのか、それとも融資の申し込みが先なのか、悩まれる場合もあるでしょう。できれば、融資が決定してから、契約を結ぶ流れが理想です。

なぜなら、物件の賃貸借契約においては、物件取得費として、以下の費用が必要になるからです。

物件取得費の内訳
  • 保証金
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 前家賃

資金の詳細については「飲食店の開業に必要な資金と準備・調達方法をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。

飲食店の開業に必要な資金と準備・調達方法をわかりやすく解説

融資が通らなければ、開業が困難になる可能性が考えられます。そのため、物件の取得においては、融資が可能かどうかというポイントが非常に重要です。

ただし、融資の申し込みをする際に、どの物件で開業するのか、というのも、審査の一つに入ってきます。そのため、融資の申し込み前に物件を決めておく必要があります。

補足:物件を決めることと、物件を契約することは異なる

ここでポイントなのは、物件を決めることと、物件を契約することは、異なるということです。

「融資の審査が通ったら、この物件を契約したい」ということを不動産会社に伝え、融資の審査結果がわかるまで契約を待ってもらうための相談をしましょう。

不動産会社によりますが、「手付金を支払う」「融資されるまでの契約を別途結ぶ」などの方法で、契約を待ってもらえるケースが考えられます。

また、融資が下りたことが契約の成立の条件となっていたり、逆に、住宅ローンのように、融資が下りなかったことで(不動産会社が)契約解除ができる条件となっていたりする賃貸借契約もあります。

物件が決まったタイミングで、すみやかに融資の申し込みを行い、審査が通ってから物件の契約を結ぶために、事前に日本政策金融公庫に行き、進め方の相談をしておきましょう。

物件の賃貸借契約と融資申し込みの流れ
  1. 事前に日本政策金融公庫に相談をする
  2. 物件を探す・決める
  3. 融資を申し込む
  4. 融資の審査が通ったら賃貸借契約を進める

融資額や、日本政策金融公庫の担当者との相談内容、不動産会社などの対応によって異なることもあります。あくまでも、一つの参考にしてください。

【ステップ1】コンセプトを明確にする

それでは、飲食店の店舗物件の探し方のコツを説明していきます。

まずは、「コンセプトを明確にする」ステップです。

飲食店の店舗物件を選定する際、「どんなお店にするのか」「どんな方がお客さんになるのか」を明確にする必要があります。これは、飲食店開業のチェックリストの【ステップ1】コンセプト設計 に当たります。

コンセプトの明確化では、おおよそ以下のことを言葉にしておきましょう。

飲食店におけるコンセプトの明確化
  • WHY(なぜ):なぜお店を開くのですか?
  • WHO(誰に):どんな方がお客さんになりますか?
  • WHAT(何を):どんなメニューを提供しますか?料金はいくらぐらいですか?
  • WHERE(場所):どの場所が適していますか?
  • WHEN(時間):営業時間は何時から何時までにしますか?
  • HOW(どうやって):お店の雰囲気はどうしますか?どんな接客をしますか?
  • HOW MUCH(費用):お店の開業にはいくらの予算をかけますか?

【ステップ2】立地を選ぶ

コンセプトが決まれば、立地を選んでいきましょう。

厚生労働省の調査によると、お客さんが飲食店を選ぶ際に重視していることのトップ3は以下です。

  • 1位:味
  • 2位:料金
  • 3位:立地

利用シーン別にみても、「味」「料金」「立地」はどんなシーンでも重視されています。

エリアを選ぶ

立地選びでは、エリアの選定を行います。

エリア選定のポイント
  • マーケット(商圏)はどうか
  • ユーザーは住んでいるか
  • ユーザーは来るか

マーケット(商圏)の状態としては、以下があります。

  • 住宅立地(住んでいる人が多い)
  • オフィス立地(仕事をしている人が多い)
  • 学生立地(大学・短大・専門学校など)
  • 商業立地(買い物や休日に利用する)
  • 郊外立地(車で来店する)

自分のお店のコンセプトに合うマーケットは、どのエリアなのか、目星をつけておきましょう。

動線を確認する

次に、導線を確認します。

導線確認のポイント
  • 人の流れはあるか
  • 外からお店は見えるか

普段から人の流れがある場所なのかを確認します。

徒歩の場合、大きな道路や川が来店の障害になることがあります。わざわざ横断歩道や橋に移動して、道路や川を渡らなければならない場合は、来店の妨げになると考えられます。

また、お店の前を通る人が、自然とお店があることに気づけるかどうかも大切です。お店の存在を認識できることは、来店のきっかけになります。

【ステップ3】店舗物件の条件を洗い出す

次に、店舗物件の条件を洗い出しましょう。

事業計画・資金に合致する条件

事業計画や資金的な条件としては以下があるでしょう。

  • 賃料
  • 保証金
  • 物件取得費
  • 広さ

「どれぐらいの広さ」「どれくらいの費用」が必要なのかを試算します。

費用については「飲食店の開業に必要な資金と準備・調達方法をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。

飲食店の開業に必要な資金と準備・調達方法をわかりやすく解説

その他の条件

その他、以下の条件も検討します。

  • 店舗の階数
  • 駐車場の有無
  • 独立店舗かテナントか
  • 物件の種類(居抜き、スケルトン、間借りなど)

1階はほとんどの業態にとって好立地です。

補足:飲食店物件(居抜き、スケルトン、間借り)の種類と選び方

飲食店物件には、主に3つの種類があります。

飲食店物件の種類
  • 居抜き物件
  • スケルトン物件
  • 間借り物件

居抜き物件とは?メリット・デメリット

【意味・定義】居抜き物件とは?

飲食店における居抜き物件とは、前のテナントの設備や什器、厨房設備、内装などが残ったままの物件のことをいう。

居抜き物件のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

居抜き物件のメリット
  • 内装・外装工事、厨房設備費用を削減できる
  • 工事期間、準備時間を削減できる
  • 飲食店があるという認知がされている
居抜き物件のデメリット
  • 設備の経年劣化による修理の必要性がある
  • 内装などの変更がしづらい・費用がかかる
  • 前のテナントの印象が残る

お店のコンセプトや条件に合った居抜き物件に出会うことができれば、メリットは大きいでしょう。前のお店がどういう物件で、なぜ閉店したのかを確認した上で、検討しましょう。

スケルトン物件とは?メリット・デメリット

【意味・定義】スケルトン物件とは

飲食店におけるスケルトン物件とは、内装や設備などがすべて撤去された状態の物件のことをいう。骨組みだけの物件をいう。

スケルトン物件のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

スケルトン物件のメリット
  • コンセプトに合わせたお店作りがしやすい
  • 内装・外装・什器・厨房設備などにこだわれる
  • 前のテナントの印象が残りにくい
スケルトン物件のデメリット
  • 内装・外装工事、厨房設備費がかかる
  • 工事期間、準備時間がかかる
  • 工事期間、準備期間にも家賃が必要
  • 原状回復義務がある場合は、原状回復に費用がかかる

自分のお店のコンセプトに合う、理想通りにお店を作りたい場合は、スケルトン物件を選ばれると良いでしょう。その分、費用と時間がかかるので、しっかりと計画を立ててお店作りを進めていきましょう。

間借りとは?メリット・デメリット

【意味・定義】間借りとは

飲食店における間借りとは、他の飲食店の営業時間外や休業日に、一時的に店舗を利用させてもらう仕組みをいう。

間借りのメリット・デメリットは、以下のとおりです。

間借りのメリット
  • 物件の取得費がかからず賃料が抑えられる
  • 内装・設備費用などがかからない
  • マッチする間借り物件が見つかれば、すぐにスタートできる
間借りのデメリット
  • 利用可能な時間が限定される
  • 設備や内装が変えられない
  • 間借り物件は多くない
  • 材料や設備のスペースがコントロールしづらい
  • 専用の住所でないため、各種集客サービス等に登録できない

「初めて飲食店にチャレンジする場合」「スピードを重視して小さくお店を始めていきたい場合」には、間借り物件から始めるのも良いでしょう。数ヶ月や半年など、期間を決めて運営されるケースも多いです。

【ステップ4】物件を探す

それでは、実際に物件を探して契約まで進めましょう。

物件探しの方法

物件の探し方には、以下の4つがあります。

  1. ネットで探す
  2. 不動産会社に依頼する
  3. 自分で探す
  4. 知り合いに紹介してもらう

どれか1つを選ぶのではなく、これら4つ全てを利用しながら探していくと良いでしょう。

探し方としては、まずはネットで相場感を掴んだ上で、不動産会社を利用したり、自分でも該当のエリアを歩きながら、良い物件を根気強く探していきましょう。

なお、一般的に、条件の良い不動産は表に出てくることはありません。これは、立地条件が業績を左右する飲食店の物件にもあてはまります。

このため、飲食店経営者の知り合いや、不動産に詳しい知り合いがいる場合は、物件を探していることを伝え、良い物件があれば、紹介してもらうように働きかけるのも一つの手です。

物件の契約までの流れ

良い物件が見つかれば、以下の流れで契約まで進みます。

先述しましたが、日本政策金融公庫などで融資の申し込みをする場合は、「日本政策金融金庫での事前相談」や「不動産会社との契約までの相談」などのステップなども入ってくるため、ご注意ください。

物件の契約までの流れ
  • 内見
  • 入居申込
  • 入居審査
  • 賃貸借契約の締結

まずは、内見を行います。店舗の周辺状況や外観、店内や厨房設備などを確認しましょう。ビルや建物の場合は、他にどんな店舗が入っているのかも確認します。

物件が気に入った場合は、入居申込に進みます。一般的には、契約者の氏名、住所、連絡先、勤務先などの基本情報と、保証人の記載が必要になります。

入居申し込みを行うと、入居審査が行われます。入居申込書以外にも、事業計画書や財務状況がわかる書類の提出を求められることもあります。さらに、貸主(オーナー)との面談が設定される場合もあるでしょう。

審査の期間は、居住用の物件よりも長く、数日〜1週間などかかる場合もあります。

審査が通過した場合は、契約を結びます。契約内容によっては、条件に合わない場合もありますので、しっかりと建物賃貸借契約書と重要事項説明書(後述)の内容を確認してから契約を結びましょう。

補足:2種類の建物賃貸借契約(借家契約)

建物賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があり、契約期間の考え方が異なってきます。

「普通借家契約」の場合は、基本的には賃貸契約が更新できる契約になり、基本的には、借主が解約をしない限り、契約は更新できます。

一方、「定期借家契約」は、契約期間が満了すると、契約が終了します。再契約する形で継続して借りることはできますが、貸主(オーナー)が再契約を希望しない場合は、借りることができません。

これから結ぶ建物賃貸借契約が、これらのうちのどちらになるのか、理解しておきましょう。

補足:重要事項説明書について

賃貸借契約は、貸主(オーナー)と借主が結ぶ契約ですが、不動産会社が借主に対して交付する書面に「重要事項説明書」があります。

【意味・定義】重要事項説明書(宅建業法)とは

重要事項説明書とは、宅地建物取引業者が宅地建物の売買・賃貸借等の取引において、相手方に対して、宅地建物取引士に物件の内容を説明させる際に交付する書面をいう(宅建業法第35条)。

わざわざ宅建業法でこのような重要事項説明を義務づけているということは、それだけ説明不足によるトラブルが多かったからです。それだけに、この重要事項説明書の内容が非常に重要である、ということでもあります。

宅地建物取引士が説明をする事項は、賃貸か売買かなどの取引内容によっても異なりますが、建物の賃貸の場合は、以下の内容に分かれます。

重要事項説明書(建物賃貸借契約の場合)の記載事項
  • 対象となる建物に直接関係する事項
  • 取引条件に関する事項
  • その他の事項

建物そのものについては、1点目の「対象となる建物に直接関係する事項」が、契約内容については、2点目の「取引条件に関する事項」が重要となります。

こちらの内容もよく理解した上で、契約に進みましょう。

まとめ

飲食店の店舗物件を探すステップは以下です。

  • 【ステップ1】コンセプトを明確にする
  • 【ステップ2】立地を選ぶ(エリアを選ぶ、導線を確認する)
  • 【ステップ3】店舗物件の条件を洗い出す(事業計画・資金に関する条件、その他の条件)
  • 【ステップ4】物件を探す(物件を探す、契約を結ぶ)

融資の申し込みなどのタイミングと合うように、計画立てて進めていきましょう。