ポイント

食品衛生責任者とは、食品衛生に関する責任者です。食品衛生責任者の仕事は、飲食店を含む食品営業の営業者が遵守するべき公衆衛生上必要な措置について、必要な注意や意見を述べることや、衛生管理をすること等です(食品衛生法施行規則別表第17第1号等)。

飲食店を開業するには、食品衛生責任者の資格が必要です。この記事では、食品衛生責任者とは何か、また、取得方法と届出の方法について、飲食店経営者向けにわかりやすく解説していきます。

食品衛生責任者とは?

【意味・定義】食品衛生責任者とは

食品衛生責任者とは、食品衛生に関する責任者をいう。食品衛生責任者の仕事は、飲食店を含む食品営業の営業者が遵守するべき公衆衛生上必要な措置について、必要な注意や意見を述べることや、衛生管理をすること等である(食品衛生法施行規則別表第17第1号等)。

飲食店を開業するには、食品衛生責任者を設置する必要があります。

資格の目的、取得方法、費用

目的 施設の衛生管理にあたって中心的な役割を担う。
取得方法 都道府県が行う講習会又は知事等が適正と認めた講習会を受講すること。
*講習会の受講免除となる場合あり(後述)
費用 開催元によって異なるが、受講料はおおよそ10,000円。

補足:食品衛生責任者と食品衛生管理者との違いは?

【意味・定義】食品衛生管理者とは

食品衛生管理者は、食品衛生法第48条の規定により、製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者が、その製造又は加工を衛生的に管理させるために置くもの。

食品衛生管理者は、衛生上の考慮を必要とする食品・添加物の製造又は加工を行う施設において、衛生上の管理を行うために設置されます。一方、食品衛生責任者は、飲食店を含む食品営業所において、衛生管理などを行うために設置される、という違いがあります。

食品衛生責任者と食品衛生管理者との違い・比較表
食品衛生管理者 衛生上の考慮を必要とする食品・添加物の製造又は加工を行う施設において、衛生上の管理を行うために設置される者。
食品衛生責任者 飲食店を含む食品営業所において、衛生管理などを行うために設置される者。

誰が食品衛生責任者になれるのか?

食品衛生責任者の資格保持者には以下の3種類があります(食品衛生法施行規則別表第17第2号ロ(1)~(3))。

  1. 講習免除となる食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす以下の資格を持つ者
    • 食品衛生管理者として以下の資格を持つ者(食品衛生法第48条第6項)
      • 医師
      • 歯科医師
      • 薬剤師
      • 獣医師
      • 学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者(当該課程を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
      • 都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者
      • 学校教育法に基づく高等学校若しくは中等教育学校若しくは旧中等学校令に基づく中等学校を卒業した者又は厚生労働省令で定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者で、第一項の規定により食品衛生管理者を置かなければならない製造業又は加工業において食品又は添加物の製造又は加工の衛生管理の業務に三年以上従事し、かつ、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了した者(※その従事した施設のみ)
    • 食品衛生監視員として以下の資格を持つ者(食品衛生法第30条、同施行令第9条)
      • 都道府県知事の登録を受けた食品衛生監視員の養成施設において、所定の課程を修了した者
      • 医師
      • 歯科医師
      • 薬剤師
      • 獣医師
      • 学校教育法に基づく大学若しくは高等専門学校、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者(当該課程を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
  2. 講習会免除となる以下の資格を持っている者
    • 調理師
    • 製菓衛生士
    • 栄養士
    • 船舶料理士
    • と畜場法に規定する衛生管理責任者
    • と畜場法に規定する作業衛生責任者
    • 食鳥検査に関する法律に規定する食鳥処理衛生管理者
  3. 都道府県知事等が行う講習会又は都道府県知事等が適正と認める講習会(養成講習会)を受講した者

上記の1,2,3の該当者で、食品衛生責任者に選任された方が、食品衛生責任者となります。

食品衛生責任者養成講習会の受講資格

食品衛生責任者養成講習会の受講資格は、地方自治体によって異なります。

例えば、年齢が17歳以上や15歳以上に設定されている場合と差があったり、高校生の受講の可/不可も異なります。その他、日本語能力のレベルを求められるなどの受講要件が設定されている場合もあります。受講される地方自治体で受講要件をご確認ください。

複数店舗の場合は、何店舗に必要なのか?

食品衛生責任者は、施設又はその部門ごとに定められるため、複数店舗を運営している場合は、店舗ごとに担当者の選任が必要です。

食品衛生責任者の資格がないとどうなるか?

食品衛生責任者の資格者を設置しないと、食品衛生法違反となり、営業禁止、営業停止等の行政処分を受ける可能性があります。

食品衛生責任の資格取得者の設置は、食品関係の営業における衛生管理の基準の一つです(食品衛生法第51条第1項、同施行規則第66条の2、同施行規則別表第17)。また、都道府県の条例によって、独自の基準が定められている場合もあります(食品衛生法第51条第3項)。

そして、飲食関係の「営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない」(食品衛生法第51条第2項)とされています。

つまり、飲食店を経営したり、店舗を開業する場合において、食品衛生責任者の資格取得者を設置しないときは、食品衛生法で義務づけられている衛生管理の基準を満たしていないこととなります。

そして、上記の食品衛生法第51条第2項に違反し、営業者が食品衛生責任者を設置しなければ、「都道府県知事は、…営業の全部若しくは一部を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる」(食品衛生法第60条第1項)とされています。

よって、食品衛生責任者の資格取得者を設置せずに営業をすると、営業停止処分や、最悪の場合、営業禁止処分の行政処分を受ける可能性があります。

このため、もしも店舗の開業までに食品衛生責任者の資格が間に合わない場合には、保健所の窓口で相談されるとよいでしょう。保健所を管轄する地方自治体によって対応が異なりますが、「食品衛生責任者設置誓約書」の提出や「食品衛生責任者養成講習会」の予約情報の提出という方法で対応ができる場合があります。

【ポイント】食品衛生責任者の資格がないと行政処分の対象となる

飲食店経営において、食品衛生責任者の資格取得者を設置しない場合、食品衛生法で義務づけられた衛生管理の基準を満たすことにならず、営業停止、営業禁止等の行政処分を受ける可能性がある。

食品衛生責任者を変更したい場合の手続きは?

食品衛生責任者が変更になる場合には、「変更届」の提出が必要です。新しく食品衛生責任者になる方の資格を証明するものも合わせて持参することになります。具体的な「変更届」や提出書類については、地方自治体ごとに異なるため、管轄の地方自治体のホームページなどで確認してください。

食品衛生責任者の取り方(取得方法)は?誰でも取れるのか?

食品衛生責任者の資格はどうやって取る?

先述したように、食品衛生責任者の資格保持者は、3種類あります。

3種類の食品衛生責任者の資格保持者
  1. 講習免除となる食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす資格を持つ者
  2. 講習会免除となる以下の資格を持っている者
    • 調理師
    • 製菓衛生士
    • 栄養士
    • 船舶料理士
    • と畜場法に規定する衛生管理責任者
    • と畜場法に規定する作業衛生責任者
    • 食鳥検査に関する法律に規定する食鳥処理衛生管理者
  3. 都道府県知事等が行う講習会又は都道府県知事等が適正と認める講習会(養成講習会)を受講した者

ここでは、取得が1.や2.に比べて簡単な3.の講習会を受講する方法についてご説明します。

都道府県が実施している講習を受講する

各都道府県の食品衛生協会などが講習を実施しています。例えば、東京都では、一般社団法人東京都食品衛生協会が「食品衛生責任者養成講習会」を実施しています。

講習会の日程や受講方法などの詳細は、管轄の保健所や食品衛生協会で確認してください。平成9年4月1日以降の修了証書は、全国どこでも有効です。

講習受講方法の流れと難易度

講習の受講方法は、地方自治体で異なってきますので、詳細については受講される地方自治体のホームページなどでご確認ください。

ここでは、東京都の食品衛生責任者養成講習会を例にして、講習の受講方法などについてご紹介していきます。

いつ受講するか

地方自治体により講習の開催日は異なってきます。東京都の場合は、都内各所の8〜10会場で開催されています。会場の予定数は110〜150人と幅があります。

講習は、通常1日で修了するものですが、都市部などでは、2ヶ月先まで予約が埋まっていることもあります。できるだけ余裕を持って受講を申し込まれておくと良いでしょう。

講習の内容と難易度

一般的に講習は6時間で、内容はおおよそ以下の通りです。

  • 食品衛生学  2時間30分
  • 公衆衛生学  30分
  • 食品衛生法  3時間

講習の実施詳細は、地方自治体によって異なりますが、東京都の場合は、午前9時45分から午後4時30分まで(昼休憩45分あり)で、テストが含まれます。

地方自治体によっては、eラーニング(ビデオ配信の形式)で実施しているところもあります。その場合、決められた受講期間の中で、ご自身の好きなペースで受講ができます。

テストの方法は地方自治体によって異なっていますが、難易度は非常に低いと言われています。例えば、eラーニングで受講する場合は、テストが合格するまで何度でもやり直しができます。

申し込み方法

申し込み方法も地方自治体によって異なります。詳細は、各地方自治体のホームページなどをご覧ください。

東京都の場合は、ホームページから「受講申込書」をダウンロードし、必要事項を記入の上、郵送します。協会本部、総合事務所及び都内保健所の窓口にも、申込書が置かれています。受付は申込書の到着順となり、定員になり次第締め切られます。受付された後、受付票が届きます。

注意事項(有効期限・更新・食品衛生実務講習会について)

食品衛生責任者の資格は、現時点では有効期限や更新は定められていません。

ただし、各地方自治体で、食品衛生責任者として働いている方向けに、食品衛生に関する新たな知見の習得のための、定期的な講習会(食品衛生実務講習会)が行われています。

講習会の案内が送られてきますので、案内に基づいて参加する必要があります(食品衛生法施行規則別表第17第1号ハ(1))。注意しておきましょう。

食品衛生実務講習会の開催方針についても、地方自治体によって異なりますので、詳細は該当の地方自治体で確認してください。

食品衛生責任者は保健所への届出が必要

養成講座を修了した方も、資格保持者で講座が免除される方も、資格があるだけでは、食品衛生責任者にはなっていません。

営業者が、営業許可申請を行う際に、該当者を食品衛生責任者として記載し、食品衛生責任者の資格を証明するものなどと合わせて、管轄の保健所に届出をする必要があります。

【補足】食品衛生法の衛生管理は国基準と都道府県基準がある

飲食店に義務づけられた衛生管理の基準は、国の基準に加えて、都道府県が条例で独自に定めるプラスアルファの基準があります(食品衛生法第51条第3項)。これは、地域の気候や食文化に大きな違いがあるため、衛生管理の基準も、それぞれの地域の実態に応じて、細かな部分は都道府県が定めるべきだからなのでしょう。

このため、大枠の衛生管理の基準については国が食品衛生法で定め、地域の実情に応じた衛生管理の基準については都道府県が条例で定める形になっています。

食品衛生責任者は、この衛生管理の基準の制度の一部ですので、資格取得の手続きや、遵守するべき衛生基準は、都道府県によって細かな違いがある場合もあります。

これまでに述べた内容は、特に言及されていない限り、主に食品衛生法にもとづく内容となっています。このため、実際に飲食店を経営し、店舗を開業する際に、食品衛生責任者の資格を取得する場合や、保健所に届出をする場合は、ホームページの確認や問い合わせなどで、管轄の都道府県・地方自治体や保健所に詳細を確認をしてください。

まとめ

飲食店を開業するには、食品衛生責任者の資格が必要です。食品衛生責任者は、各都道府県が実施している講習会を受けた方か、講習会免除となる資格(調理師や栄養士など)を持っている方を選任します。食品衛生責任者は、保健所への届出が必要なので、忘れずに行いましょう。