飲食店の営業許可は、飲食店を開業する際に必要な手続きのこと。
- 食品衛生法に基づく「営業許可の申請や営業届出」を行い、
- 保健所による施設や設備の検査をクリアして、
- 「営業許可」を取得する
ステップで行います。
この記事では、飲食店の営業許可の取得手順や費用、更新方法などをわかりやすく説明していきます。
飲食店の営業許可とは?
【意味・定義】飲食店の営業許可とは
飲食店の営業許可とは、飲食店を開業する際に必要な手続き。食品衛生法に基づく「営業許可の申請や営業届出」を行い、保健所による施設や設備の検査をクリアして、「営業許可」を取得すること。
飲食店を開業する際に、誰もが「必須」で取得が必要です。
自宅で飲食店を開業したい場合や、テイクアウトのみのお店の場合も、「営業許可」が必要です。
もし、許可なく営業した場合は、無許可営業となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が適用されることもあります(食品衛生法第82条第1項)。
営業許可にはいくつか種類がある
飲食店の経営を含む食品に関する営業を行う際には、食品衛生法に基づいた営業許可が必要です。
営業許可には、いくつかの種類があります。該当する数だけ、営業許可を取得していくことになります。
飲食店の営業許可として、代表的な以下の2つの種類を知っておきましょう。
- 飲食店営業許可
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届
順番に見ていきます。
1. 飲食店営業許可
一般的に、取得する必要がある営業許可です。
【意味・定義】飲食店営業許可とは
飲食店営業許可とは、食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業における許可(食品衛生法施行令第34条の2第2号)。
「調理」とは、その場で客に 飲食させる、又は短期間のうちに消費されることを前提として、一応摂食しうる状態に 近くなった食品を変形させる、他の食品を附加する、あるいは調味を加えるなどして飲 食に最も適するように食品を加工成形することをいう(生食発1227第2号)。
新しく食堂、レストラン、カフェ等、一般的な飲食店などを開業する場合は、飲食店営業許可を取得することになります。
2. 深夜酒類提供飲食店営業開始届
飲食店を開業する場合で、以下の条件に該当する場合は、「飲食店営業許可」に加えて、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を警察署に提出する必要があります。
- 深夜0時以降も営業する
- お酒をメインで提供する
【意味・定義】深夜酒類提供飲食店営業開始届とは
深夜酒類提供飲食店営業開始届とは、深夜0時以降も営業するお店で、お酒をメインで提供する場合に、警察署に提出が必要な届出のことをいう(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第33条第1項)。
【意味・定義】酒類提供飲食店営業とは
酒類提供飲食店営業とは、飲食店営業(接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業および特定遊興飲食店営業を除く)のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く)をいう(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第13条第4号)。
その他の営業許可
その他、食品に関する営業にはいくつか種類があり、以下のものについては、食品衛生法で定められた営業許可が必要です。該当する場合は、取得の必要があります。
その他飲食営業に必要な営業許可一覧
- 食肉販売業
- 魚介類販売業
- 食肉処理業
- 菓子製造業
- アイスクリーム 類製造業
- 乳製品製造業
- 清涼飲料水 製造業
- 食肉製品製造業
- 水産製品製造業
- 酒類製造業
- 豆腐製造業
- 麺類製造業
- そうざい製造業
- 複合型そうざい 製造業
- 冷凍食品製造業
- 複合型冷凍食品 製造業
- 漬物製造業
- 密封包装食品 製造業
- 食品の小分け業
上記のほか、調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業、特別牛乳搾取処 理業、食品の放射線照射業、魚介類競り売り営業、集乳業、乳処理業、氷雪製造業、液卵製造業、食用 油脂製造業、みそ又はしょうゆ製造業、納豆製造業、添加物製造業
補足:令和3年6月1日の営業許可の見直し
平成30年の食品衛生法の改正に伴い、実態に応じた営業許可業種への見直しや、営業許可業種以外の事業者の届出制度の創設が行われました。
飲食店の営業許可として抑えたいポイントとしては、改正前は「飲食店営業」と「喫茶店営業」が分かれていましたが、改正後は、「喫茶店営業」がなくなり、「飲食店営業」と「調理の機能を有する自動販売機」に分かれたことです。
一般的な喫茶店を営業する場合には、「飲食店営業」を取得しておけば問題ありません。
「食品衛生責任者」と「防火管理者」も必要!
飲食店の営業許可を取得するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 「食品衛生責任者」の設置
- 「防火管理者」の設置(条件に合致する場合)
それぞれ説明します。
1.「食品衛生責任者」の設置
飲食店の営業許可を申請する際に、「食品衛生責任者」の記載が必要です。
食品衛生責任者とは、食品衛生に関する責任者のこと。
食品衛生責任者の仕事は、飲食店を含む食品営業の営業者が遵守するべき公衆衛生上必要な措置について、必要な注意や意見を述べることや、衛生管理をすること等です(食品衛生法施行規則別表第17第1号等)。
食品衛生責任者になるには、資格が必要です。
詳細については、「飲食店開業に必要な食品衛生責任者資格とは?取得方法・届出もわかりやすく解説」の記事でご紹介しています。併せてご確認ください。
2.「防火管理者」の設置
飲食店の開業に際しては、条件に該当する場合「防火管理者」を設置する必要があります。
防火管理者とは、多数の人が利用する建物(防火対象物)の「火災による被害」を防止するために必要な安全対策を定め、防火管理上必要な業務を行う責任者です(消防法第8条)。
飲食店の場合、収容人員が30人以上の場合は、防火管理者が必要です。
詳細については、「飲食店開業に防火管理者資格は必要?役割や取得方法もわかりやすく解説」の記事でご紹介しています。併せてご確認ください。
飲食店の営業許可取得の流れ
飲食店の営業許可を取得する流れは、以下のステップです。
- 保健所に「事前相談」をする
- 「営業許可申請書類」の提出をする
- 保健所が「施設検査」を行う
- 営業許可証が「交付」される
営業許可書を提出した後に、保健所の担当者が店舗・施設に訪れ、「施設要件を満たしているか」を確認します。
もし店舗の工事が終わってから、「施設要件を満たしていない!」となってしまうと、再度工事をする必要があり、手間がかかってしまいます。
そのため、着工する前に、図面などを保健所に持参して、施設や設備が検査基準を満たしているのか、事前相談することをおすすめします。
「営業許可取得」に関する質問
- Q1.飲食店営業許可証はどこに置く?
- A1.店内の見やすい場所に掲示する必要があります。
- Q2.飲食店営業許可証の営業許可番号はどれ?何桁?
- A2.飲食店番号は、飲食店営業許可証に記載されています。
元号が平成から令和に変わることに伴い、平成31年4月1日から食品営業許可番号の付番方法が変わりました。
平成の年度2桁数字が許可番号でしたが、西暦年度の4桁数字を許可番号に使う付番方法に変更となっています。
例)
従来:飲食店営業 第30-100号
現在:飲食店営業 第2019-100号
営業許可取得はどれくらいかかる?
営業許可の申請から取得にかかる日数ですが、施設の検査に問題がない場合、2−3週間で、許可が降りる場合が多いでしょう。
ただし、申請をした後、保健所の施設検査までにかかる日数が、自治体によって異なります。
保健所に事前相談を行う際に、どれくらいの日数がかかるのか、確認しておきましょう。
飲食店の営業許可取得は何日前から行えばいい?
営業開始日から逆算し、早めに許可申請を行いましょう。通常は申請から2−3週間で営業許可が取得できるため、遅くても3週間ほど前に申請を行いましょう。
自治体によっては、書類提出は、施設完成の10日前を提出の目安にしている場合もあります。
飲食店の営業許可取得にかかる費用は?
飲食店の営業許可の新規取得には、「申請料金」がかかります。
申請料金は、営業許可の種類や、地域によって異なります。15,000円〜20,000円で取得できるケースが多いです。
例えば、東京都新宿区の場合は、以下の費用になっています。
業種 | 金額 |
---|---|
飲食店営業 | 18,300円 |
飲食店営業(移動・臨時) | 5,600円 |
調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業 | 7,200円 |
「新規営業許可申請」に必要な書類のまとめ
新規の営業許可申請に必要な書類は以下です。
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格を示すもの
- 水質検査成績書(物件による)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 申し込み手数料
それぞれ説明していきます。
1.営業許可申請書
管轄の保健所の窓口や、ホームページなどからダウンロードして入手します。
申請書は地域によって異なるため、店舗がある管轄の保健所の申請書を利用してください。この申請書内に、「食品衛生責任者の氏名」などを記載する項目があるため、事前に「食品衛生責任者」の選定が必要になります。
2.営業設備の大要・配置図
施設の構造及び設備を示す図面です。こちらも、管轄の保健所の窓口や、ホームページなどからダウンロードして入手できます。
「店舗設備の配置」と「営業設備の内容」を記載します。
3.食品衛生責任者の資格を示すもの
食品衛生責任者の資格を表す証明書です。例えば、食品衛生責任者手帳等があります。
食品衛生責任者の資格については「飲食店開業に必要な食品衛生責任者資格とは?取得方法・届出もわかりやすく解説」の記事でご紹介しています。
4.水質検査成績書(該当する場合)
貯水槽使用水、井戸水使用の場合には、水質検査成績書が必要です。管轄の自治体によっては条件が異なる場合がありますので、保健所に事前相談に行く際に、条件を確認されるとよいでしょう。
物件が、貯水槽使用水、井戸水使用をしているのかは、管理会社などに問い合わせをすれば回答を得られます。該当する場合は、水質検査成績書をもらうことが可能かも確認されるとよいでしょう。
5.登記事項証明書(法人の場合)
飲食店を開業するのが法人の場合は、登記事項証明書の提出も必要です。個人事業主の場合は必要ありません。
登記事項証明書は、現在の組織と変更がない、最新のものを用意します。
6.申し込み手数料
上述しましたが、営業許可の申請には、申し込み手数料(15,000円〜20,000円ほど)がかかります。
料金は、営業許可の種類や、地域によって異なりますので、ご自身が申請する自治体の申し込み手数料を確認し、料金を持参しましょう。
保健所の施設検査のポイント
保健所の施設検査のポイントをご紹介します。開業する都道府県や地域によって、異なる部分がありますが、一般的な以下のポイントは抑えておくようにしましょう。
建物に関するもの
- 店舗スペースは住居やその他のスペースと明確に仕切られていること
- 厨房と顧客が飲食するスペースが明確に仕切られていること
- 店舗スタッフの更衣スペースが明確に仕切られていること
- 掃除しやすい壁であること
- 掃除しやすい床であること
- 店内が十分に換気できること
- ネズミやゴキブリなどの害虫侵入対策がされていること
設備や備品に関するもの
- 手洗い場は、従業員用と顧客用にそれぞれあること
- 適切なトイレが設置されていること
- 厨房内に蓋付きのゴミ箱が設置されていること
- 扉付きの棚が設置され、食器や食品を衛生的に保管できること
- 二層式のシンクがあること(一層式シンクを横並びにしても可)
- 厨房内に冷蔵庫やオーブンなどの厨房機器が収まっていること
- 扉がついた食器棚が設置されていること
営業許可には有効期限がある!
営業許可には有効期限があり、営業許可期限満了後も営業を続けていくためには、更新が必要です。
営業許可の有効期限
食品衛生法第55条第3項に、「都道府県知事は、第一項の許可に五年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができる。」という規定があります。
つまり、5年を下回らない(5年以上)の有効期間が、都道府県ごとに定められています。一般的には5年〜8年ぐらいの有効期限を定めていることが多いでしょう。
営業許可の有効期限は、飲食店営業許可証に記載されているのでご確認ください。
営業許可の更新方法
営業許可の更新は、許可期限満了日の約1ヶ月前までには、以下の書類を提出する必要があります。
- 営業許可申請手数料
- 営業許可申請書
- 現在の営業許可書
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
営業者の変更や、設備の変更などがあった場合は、追加の手続きなどが必要になる場合もあります。
自治体によって、更新に必要な書類や手続き、申請期間が異なる場合もありますので、管轄の自治体で詳しい更新方法をご確認ください。
営業許可の更新費
営業許可の更新費は、営業許可の種類や、地域によって異なりますが、1万円前後となることが多いようです。
例えば、新宿区の場合、飲食店営業の継続にかかる更新費は、「8,900円」です。
補足:食品衛生責任者の変更届
食品衛生責任者が変更になる場合には、「変更届」の提出が必要です。新しく食品衛生責任者になる方の資格を証明するものも合わせて持参することになります。
具体的な「変更届」や提出書類については、地方自治体ごとに異なるため、管轄の地方自治体のホームページなどで確認してください。
まとめ
飲食店を営業するには、「営業許可」を取得する必要があります。営業許可の取得には、営業許可を申請し、保健所による施設や設備の検査をクリアする必要があるため、余裕を持って準備しましょう。
また、テイクアウトの場合は、販売する内容によっては、飲食店の営業許可以外にも、「食品に関する営業許可」を取得する必要があります。許可が必要な商品を事前に確認し、スムーズな飲食店の開業準備を行いましょう!
そのほか、飲食店を開業する流れについては、「【保存版】飲食店開業の流れを解説「いつまでに何をすれば良い?」」の記事も参考にしてください。