近年、飲食店の売上が回復傾向にあります。一般社団法人日本フードサービス協会によると、2022年の外食産業の売上が前年比で113.3%増加しました。(出典 : 外食産業市場動向調査 令和 4 年(2022 年)年間結果報告)
さらに、海外からの観光客も増えており、インバウンド対応が鍵になる飲食店も増えています。
一方、それを支えるだけのスタッフやアルバイトなどの人手が不足していて、売上の機会損失が増えてきています。
この記事では、飲食店の人手不足の原因と対策について説明します。
人手不足は深刻な問題だ… どうやって解決したらいいのか知りたい!
飲食店の人手不足の現状
飲食店がどれだけ人手不足になっているのか、現状を見ていきましょう。
一般社団法人日本フードサービス協会によると、人手不足による売り上げ機会のロス などが、回復途上の外食産業の経営を圧迫しているという調査があります。
出典:外食産業市場動向調査 令和 4 年(2022 年)年間結果報告
また帝国データバンクによると、飲食店の人手不足割合は、
- 正社員:64.9%
- 非正社員:76.3%
と高水準になり、業種別にみても、群を抜いて厳しい状況が続いています。
飲食店は、いろんな業界の中でも、特に人手不足がひどいんだね…
飲食店が人手不足の理由・原因は?
なぜ飲食店は人手不足になっているのでしょうか? 3つの理由・原因をご紹介します。
1. 時間外労働が多い/仕事量が多い
飲食店では、時間外労働が増えたり、1人のスタッフが担う仕事量が多い傾向にあります。
帝国データバンクの調査データによると、以下のような状況が報告されています。
- 2022年の飲食店での時間外労働の増加は、前年同月比で40.6%と高い
- 人手不足の解消に向け、採用活動をしても なかなか人材が集まらないとの声が多い
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年1月)」
人材不足を補うため、時間外労働を行う必要が出てきてしまっており、オーナーやスタッフに大きな負担がかかってしまっています。
このような状況が定着率の低下や、採用活動において人材が集まらないという原因の一つになっていると考えられます。
2. 賃金が安い
厚生労働省の令和2年の賃金に関する調査によると、「宿泊業,飲食サービス業」は産業別で最も低い賃金水準となっています。
飲食サービス業では、賃金が低い傾向にあります。そのため、スタッフやアルバイトとして働く際に魅力的な賃金が得られないことが、スタッフを募集しても人が集まりにくい一因となっていると考えられます。
3. 接客業のストレスが多い
接客業では、要求が過剰な顧客やクレームをつける顧客とのやり取りにより、スタッフは精神的なストレスを抱えることがあります。
仕事の負担に対して、賃金が安いのが大きな原因なんだろうなぁ…
そもそもスタッフは何人必要なのか?
飲食店の店舗で、何人のスタッフが必要なのかは、3つの方法で目安を出すことができます。
スタッフの適正人数の求め方
- 客席数から計算する
- 人時売上高から計算する
- 人件費から逆算する
スタッフの適正数については「飲食店スタッフの人数は何人が適正?少ない人数でお店を回せる?」の記事で詳しく解説しています。
人手不足の対策方法は?
では、人手不足はどのように対策すればいいのでしょうか? 3つの方向からご紹介します。
1. 働きやすい労働環境づくり
スタッフが定着するような働きやすい環境を整えることが重要です。具体的な施策としては以下が考えられます。
- 短時間勤務を歓迎する。例えば、人手が足りないピーク時に数時間だけの勤務も可能にする。
- SNSやチラシの作成業務は、在宅作業も可能にする。
働きやすい職場環境を整えることで、スタッフの定着率が上がり、紹介による新たなスタッフの獲得にもつながる可能性があります。
2. 採用の幅を広げる
採用の条件を柔軟にすることも重要です。以下のような方法が考えられます。
- 年齢の幅を広げる
- 外国人スタッフの採用も検討する
- 短時間勤務希望の方も歓迎する
採用条件の幅を広げることで、応募者数を増やすことにつながります。
3. ITを導入して人手を削減する
そもそもオペレーションに人手がかからないように、ITツールを導入する方法があります。
ITツールの主な例として、以下があります。
- POSレジの導入
- セルフオーダーシステムの導入
特に、セルフオーダーシステムはホールスタッフの注文受け業務を削減できるため、急速に導入が進んでいます。
セルフオーダーって何?
セルフオーダーとは、お客さま自身が注文を行う仕組みです。最近では、お客さまのスマホでQRコードを読み込み、注文までをするセルフオーダーの仕組みが増えてきました。
- お客様が自分のスマホでQRコードを読込む
- スマホでメニューを閲覧する
- スマホから注文をする
- 注文内容はキッチンで確認できる
- 会計金額も自動で計算される
というもの。
ホール業務で時間がかかる「注文取り」の作業をお客様に行ってもらうことで、ホールスタッフの負担を圧倒的に減らすことができます。
当社の「オーダーアール」も、スマホで行うセルフオーダー(モバイルオーダー)のサービスです。無料で利用できるので、ぜひお試しください。
人手不足の対処に成功した事例
人手不足の対処に成功した事例を3つご紹介します。
ケース1:残業を無くした飲食店
スタッフの定着率を向上させる取り組みとして、「働きやすい職場づくり」に取り組んだ飲食店があります。仕事と育児の両立を支援するために、以下の取り組みに挑戦しました。
- 営業時間の短縮
- 有給休暇の活用と完全消化制度
- フレックスタイム制の適用
その結果、「残業なし」という状況が実現し、さらに次のような成果が出ました。
- 就職希望者の増加と女性従業員の定着率の向上
- 外国人のお客様の増加(語学習得や資格取得などの推進)
このような取り組みによって、飲食店は人手不足の対処に成功しました。
ケース2:セルフオーダーで人手不足を乗り切り、営業時間増へ
人手不足に悩んでいた飲食店では、「ランチ営業は週末のみに制限」「オーダーの聞き間違いの発生」「追加オーダーの呼び出しの多さ」に悩んでいました。ITツールを検討した結果、高額なPOSレジではなく、セルフオーダーシステムの導入を決定しました。
セルフオーダーシステムの導入により、お客様が自分でオーダーを行うことで注文の正確性が向上し、以前6人必要だったスタッフでも5人で運営できるようになりました。また、スタッフのシフトの柔軟性も増し、ランチ営業を再開することができました。さらに、同じ営業時間内での売り上げも上昇するという成果が出ました。
参照:経済産業省ミラサポplus「セルフオーダーで人手不足を乗り切り、営業時間増へ」
ケース3:セルフオーダーで新人アルバイト対応でも売上5%UP
経験豊富なスタッフが不足し、新人アルバイトがホール業務を担当することになった居酒屋の事例があります。この居酒屋は複数階に客席があり、注文受けの作業には階段を上り下りする必要もありました。スタッフの負担を軽減するため、セルフオーダーシステムを導入することにしました。
その結果、スタッフの注文受け業務が不要となり、ホール業務に余裕が生まれました。さらに、セルフオーダーシステムによって、これまで注文されなかったメニューの注文も増え、売り上げは5%以上も上昇しました。
詳細は、「新人アルバイトでも接客効率化!時短と注文増で客単価5%以上アップ」でインタビュー記事で公開中です。
まとめ
- 外食産業は、2022年の売り上げは回復傾向にあり
- ただし、人手不足の状況は深刻
- 人手不足の対処としては、以下の3つの視点で考えてみる
- 働きやすい労働環境づくり
- 採用の幅を広げる
- ITを導入して人手を削減する(POSレジ、セルフオーダーシステムなど)