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飲食店の開業・経営には、食品衛生責任者、防火管理者、飲食店営業許可等の資格や、許可、届出等の手続きが必要となります。この記事では、こうした飲食店の開業に必要となる資格や届出について解説します。また、おすすめ資格についても併せてご紹介していきます。

飲食店オーナーや飲食店経営者の方は、是非参考にしてください。

飲食店開業は何から始める?

飲食店開業において必ず必要になるのが、資格の取得と各種の届出です。

どんな「資格」取得や「届出」が必須であるのか、知ることから始めましょう。

さらに、飲食店の開業を行うためには、コンセプトの設計や資金調達、お店の内装や外装の施工など、いくつかのステップが必要になります。飲食店の開業の流れを知りたい方向けの内容は、次の記事でご紹介します。

飲食店を開くには何の資格・届出が必要?

それでは、具体的に飲食店を開くために必須となる資格をご紹介します。

飲食店の開業に必要な3つの資格と届出

飲食店の開業には、3つの資格と届出が必要です。

飲食店の開業に必要な3つの資格と届出
  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者
  • 飲食店営業許可

それぞれ説明していきます。

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、食品衛生に関する責任者のことです。施設の衛生管理にあたって中心的な役割を担います。

【意味・定義】食品衛生責任者とは

食品衛生責任者とは、食品衛生に関する責任者をいう。食品衛生責任者の仕事は、飲食店を含む食品営業の営業者が遵守するべき公衆衛生上必要な措置について、必要な注意や意見を述べることや、衛生管理をすること等である(食品衛生法施行規則別表第17第1号等)。

飲食店を開業するには、店舗ごとに食品衛生責任者を設置する必要があります。

食品衛生責任者の資格者を設置しないと、食品衛生法違反となり、営業禁止、営業停止等の行政処分を受ける可能性があります。

食品衛生責任者の資格取得について

取得方法 都道府県が行う講習会又は知事等が適正と認めた講習会を受講すること。*講習会の受講免除となる場合あり
費用 開催元によって異なるが、受講料はおおよそ10,000円。
講習会の日数 開催元によって異なるが、一般的に1日(6時間)。

講習は、通常1日で修了するものですが、開催する都道府県によって、開催日が異なります。また、都市部などでは、2ヶ月先まで予約が埋まっていることもあります。できるだけ余裕を持って受講を申し込みましょう。

詳細は「飲食店開業に必要な食品衛生責任者資格とは?取得方法・届出もわかりやすく解説」の記事でご確認ください。

飲食店開業に必要な食品衛生責任者資格とは?取得方法・届出もわかりやすく解説

防火管理者

防火管理者とは、消防に関する責任者のことです。施設の消防対策・防火管理にあたって中心的な役割を担います。

【意味・定義】防火管理者とは

防火管理者とは、防火対象物の防火管理に関する講習の課程を修了した者等一定の資格を有し、かつ、防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的又は監督的な地位にある者で、管理権原者から選任された者をいう(消防法第8条)。

全ての飲食店で防火責任者の選任が必要なわけではなく、収容人員が30人以上の場合は、防火管理者が必要です。収容人員が29人以下のお店の場合は、防火管理者の資格や届け出は必要ではありません。

防火管理者の選任の義務がある場合に、選任をしていない場合、防火管理者の選任義務が規定された消防法第8条第1項違反となり、所轄の消防署から命令を受けたり、罰則の対象となります。

防火管理者になるためには、2つ要件があります。

防火管理者になれる人
  • 防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある方
  • 防火管理に関する知識及び技能の専門家としての資格を有している方

1については、アルバイトやパートなどで勤務する方は、管理や監督的な地位にはないので当てはまらないでしょう。経営者や店長など、防火管理に関する業務を適切に遂行できる管理・監督の地位にある方が、防火管理者になる必要があります。

一般的な飲食店では、「防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある方」で、防火管理講習を受けた方が、防火管理者に選任されていることが多いでしょう。

防火管理講習について

収容人員が30人以上の飲食店の場合、防火対象物全体の延べ面積によって、防火対象物区分が2つに分かれ、防火対象物区分ごとに、必要な防火管理者の資格が定められています。

防火対象物全体の延べ面積 300㎡以上 300㎡未満
防火対象物区分 甲種防火対象物 乙種防火対象物
防火管理者資格区分

甲種防火管理者

甲種又は乙種防火管理者

都道府県によって、防火管理講習の実施者が異なるため、講習時間や受講料が異なります。ここでは、一般財団法人日本防火・防災協会の講習内容を、紹介していきます。

甲種防火管理者

講習種別 甲種防火管理新規講習
講習時間 10時間(2日間講習)
受講料 8,000円
講習内容
  • 防火管理の意義及び制度
  • 火気管理、施設・設備の維持管理
  • 防火管理に係る訓練及び教育
  • 防火管理に係る消防計画など* 受講申込み時の申請により一部科目の受講が免除される資格あり

乙種防火管理者

講習種別 乙種防火管理講習
講習時間 おおむね5時間(1日間講習)
受講料 7,000円
講習内容
  • 防火管理の意義及び制度
  • 火気管理、施設・設備の維持管理
  • 防火管理に係る訓練及び教育
  • 防火管理に係る消防計画など上記の講習事項のうち、基礎的な知識及び技能

講習の日程、申し込み方法、受講料に関しては、開催する実施者により異なりますので、管轄の消防署で確認してください。

また、防火管理に関する知識及び技能の専門家としての資格を有した(講習を受講した)だけでは、防火管理者の選任が完了したことにはなりません。防火管理者の選任には、「防火管理者の選任届」を、所轄の消防署への届出が必要です。忘れずに行いましょう。

詳細は「飲食店開業に防火管理者資格は必要?役割や取得方法もわかりやすく解説」の記事でご確認ください。

飲食店開業に防火管理者資格は必要?役割や取得方法もわかりやすく解説

飲食店営業許可

飲食店の営業許可は、飲食店を開業する際に必要な手続きです。食品衛生法に基づく「営業許可の申請や営業届出」を行い、保健所による施設や設備の検査をクリアして、「営業許可」を取得することが求められます。

営業許可には、いくつかの種類がありますが、新しく食堂、レストラン、カフェ等、一般的な飲食店などを開業する場合は、「飲食店営業許可」を取得することになります。

ここでは、「飲食店営業許可」の取得についてご説明していきます。

飲食店営業許可の取得は、以下のステップで行われることが一般的です。

  1. 保健所に事前相談をする
  2. 営業許可申請書類の提出をする
  3. 保健所が施設検査を行う
  4. 営業許可証が交付される

それぞれ見ていきましょう。

1. 保健所に事前相談をする

営業許可書を提出した後に、保健所の担当者が店舗・施設を訪れ、「施設要件を満たしているか」を確認します。

店舗の工事が終わってから、「施設要件を満たしていない」となってしまうと、手間がかかってしまいます。そのため、着工する前に、図面などを保健所に持参して、施設や設備が検査基準を満たしているのか、事前相談されることをおすすめします。

2. 営業許可申請書類の提出をする

営業許可の申請に必要な書類は以下です。

  • 営業許可申請書
  • 営業設備の大要・配置図
  • 食品衛生責任者の資格を示すもの
  • 水質検査成績書(物件による)
  • 登記事項証明書(法人の場合)
  • 申し込み手数料

営業許可書申請書の項目で、食品衛生責任者の記載と証明書が必要となります。

3. 保健所が施設検査を行う

保健所の担当者が店舗・施設を訪れ、「施設要件を満たしているかの検査」を行います。

4. 営業許可証が交付される

提出書類や施設検査に問題がなかった場合に、営業許可証が交付されます。

詳細は「飲食店の営業許可とは?取得手順・費用・更新をわかりやすく説明」の記事でご確認ください。

【2023年最新】飲食店の営業許可とは?取得手順や費用を解説!

補足:調理師免許は飲食店の開業には不要

「調理師免許」は飲食店の開業には不要です。調理師免許がなくても、飲食店は開業可能です。調理師を雇う必要もありません。

【意味・定義】調理師とは

​​「調理師」とは、調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者をいう(調理師法 第2条 )。

飲食店に関連する資格・届出一覧

飲食店に関連する資格・届出をまとめました。

飲食店開業・経営に関連する資格・届出・許可・手続き等一覧
  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者
  • 飲食店営業許可
  • 調理師免許
  • ふぐ調理師免許
  • 菓子製造業許可
  • アイスクリーム類製造許可
  • 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出
  • 風俗営業許可申請

    飲食店で役立つおすすめ資格10選

    飲食店で役立つおすすめの資格10選をご紹介します。

    調理師免許

    調理師は、都道府県知事の免許を受けた方で、「調理師」と名乗って仕事をすることができる国家資格です。

    先述しましたが、調理師免許は飲食店の開業には必要ありません。

    ただし、調理師資格があると、食品や衛生、栄養についての知識を有していると見なされるため、お客様に信頼を与えることに繋がります。

    ふぐ調理師免許

    ふぐは猛毒があるため、ふぐを捌いたり調理するためには、「ふぐ調理師免許」が必要になります。

    ふぐ調理師免許は、都道府県が認定するものになります。詳細は、各都道府県の条例をご確認ください。

    栄養士

    栄養に配慮したメニューを提供したい場合は、栄養士の資格があると信頼感が高まるでしょう。

    栄養士は栄養士法にもとづき、都道府県知事の免許を受けた資格となります。「食事や栄養面のアドバイス」と、「献立の作成などの食事の管理」を行う役割です。

    栄養士になるには、専門学校や大学、短大など、厚生労働大臣の指定した養成施設での知識や技術の習得が求められます。施設の卒業時に、資格取得となります。

    管理栄養士

    管理栄養士は、厚生労働大臣の指定した養成施設を卒業した後、さらに国家試験に合格することで取得できる国家資格です。

    管理栄養士も栄養士と同じく栄養士法にもとづく資格ですが、栄養士より、高度な専門知識を有する証明になります。

    パン製造技能士

    パン製造技能士とは、パンづくりに関する高度な知識と技術を有することを証明する国家資格です。パン製造技能士は、2級、1級、特急に分かれていて、試験を受験するための資格がそれぞれ定められています。

    パンをお店の特徴にしたい場合は、こちらの資格も検討されると良いでしょう。

    製菓衛生師

    製菓衛生師は、製菓衛生師法で定められた国家資格です。都道府県知事の免許を受け製菓衛生師の名称を用いて菓子製造業に従事する者を指します。

    試験を受けるためには、都道府県知事が指定する養成施設で1年以上学んだ場合か、製菓製造の現場で2年以上の実務経験を積んでいることが求められます。

    パティシエとして活躍される場合にあるとよい資格でしょう。

    ソムリエ

    ソムリエは、ワインの専門知識を有した人で、飲食店において、お客様にワインの選定・提供を行います。

    国家資格ではなく、「日本ソムリエ協会(JSA)」と「全日本ソムリエ連盟 (ANSA)」の2つの団体が、民間資格を認定しています。

    ソムリエは有名な資格です。ワインの提供に力を入れている場合は、ソムリエ資格にチャレンジされると良いでしょう。

    ビアテイスター

    ビアテイスターは、日本地ビール協会が認定している民間資格です。

    テイスティングによって、ビールの品質を客観的に判断して、それを説明する能力を有していることを証明する資格になります。

    昨今では、クラフトビールも人気を博し、様々な種類のビールを扱うお店も増えてきました。ビールをお客様に提案できるようなお店にしたい場合は、ビアテイスターの資格がマッチするでしょう。

    唎酒師(ききさけし)

    唎酒師とは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会によって認定される民間資格です。

    「お客様に日本酒を美味しく飲んでいただくため」の知識を有していることの資格になります。季節に合わせた料理や酒器の提案力や、お客様の好みに合わせた日本酒の提案力が求められます。

    日本酒を楽しんでもらいたい飲食店の場合は、この資格があると提案力の強化に繋がるでしょう。

    フードコーディネーター

    フードコーディネーターは、日本フードコーディネーター協会が認定している民間資格です。

    新しい食のブランドやトレンドを創る人をフードコーディネーターとして定義しており、「食の開発」「食の演出」「食の運営」など分野で活躍しています。

    創作料理などを提供する飲食店において、フードコーディネーターの資格があると、新しいメニューや演出の企画につながるかもしれません。

    その他の申請や届出

    その他、飲食店の開業に関連して、知っておきたい申請や届出についてもご紹介していきます。

    個人事業の開廃業等届出書

    個人で飲食店を開業する場合は、「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」を税務署に提出します。事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内の提出が必要です。

    労災保険の加入手続き

    法人として従業員を雇う場合に必要な手続きです。従業員を雇い入れた日が労働保険の加入日となります。雇用から10日以内に手続きをする必要があります。

    雇用保険の加入手続き

    労災保険と同様に、法人として従業員を雇う場合に必要な手続きです。こちらは、雇用から翌月10日までに手続きをする必要があります。

    社会保険の加入手続き

    社会保険は、会社などに雇用されて働く職員など「被用者」を対象とする厚生年金保険や健康保険のことです。

    個人で開業する場合、加入は任意ですが、法人の場合は、社会保険に加入する必要があります。

    外国人雇用状況の届出

    外国人を雇用する場合は、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」をしなければなりません。

    外国人雇用状況の届出は、外国人を雇用する場合には必須の手続きであり、離職の際にも手続きをしなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項)。

    この届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科されます(同第40条第1項第2号)。

    なお、インターネットによる電子届出でも手続きできます。

    まとめ

    飲食店の開業は、「食品衛生責任者」「防火管理者(該当する場合のみ)」「飲食店営業許可」の資格・届出が必要です。

    その他にも、飲食店に関連する資格や、取得すると役立つ資格などが様々あります。

    まずは、必要な資格や届出を取得した上で、関連資格や役立つ資格の取得も検討していくと良いでしょう。

    飲食店の開業・経営には、食品衛生責任者、防火管理者、飲食店営業許可等の資格や、許可、届出等の手続きが必要となります。この記事では、こうした飲食店の開業に必要となる資格や届出について解説します。また、おすすめ資格についても併せてご紹介していきます。

    飲食店オーナーや飲食店経営者の方は、是非参考にしてください。